●私たちの研究室では、タンパク質科学・生化学的実験手法を駆使して研究を進めています。ヒト疾患や大腸菌といった生物的なキーワードを掲げているので、「生物」的な研究室とよく誤解されます。しかし、タンパク質の化学構造、反応速度解析、平衡論的解析(相互作用)などに関する研究を進めていることからも、タンパク質を題材にした「化学」的な研究室であるといえます。
●もっともよく使用する実験手法は、各種の電気泳動法(SDS-PAGE, Native-PAGE, Western blottingなど)によるタンパク質解析です。電気泳動法は非常に基本的な実験手法ですが、ヴァリエーションが非常に多く、工夫次第では新規の解析手法開発も可能です。
●分光学的手法についても頻繁に用います。タンパク質濃度の定量や、タンパク質の局所的な構造変化、二次構造レベルでのキャラクタリゼーションなど、分光学はタンパク質に関する非常に多くの情報を与えてくれます。厳密には「分光学」的手法ではありませんが、核磁気共鳴法やX線小角散乱などを使って、タンパク質の溶液構造を明らかにすることもできますし(核磁気共鳴は北大・石森先生、X線小角散乱は分子研・秋山先生との共同研究)、X線結晶構造解析によるタンパク質構造決定を行うこともできます(兵庫県立大・城先生、分子研・秋山先生との共同研究)。
●タンパク質の熱安定性解析(示差走査熱量分析)、タンパク質の二次構造解析(円二色性分散)などについても、多くのノウハウを持っています(装置使用は分子研・秋山先生との共同研究)。
●線虫を使用した実験についても可能です。線虫への外来遺伝子インジェクションや、基本的な行動解析に必要となる設備が揃えられています。精製タンパク質を用いて提案するメカニズムを、実際の生物で検証することができます。
●研究室で所有している実験・測定装置を以下に示しますが、これ以外にも大型の研究設備としてよく使用するのは、MALDI-TOF質量分析計や透過型電子顕微鏡などがあります。これらについては、慶應義塾大学理工学部の中央試験所にて利用が可能です。私たちの研究室では、タンパク質の構造・物性を知るために必要な実験・研究をほぼすべてカバーできます。
電気泳動関連装置(SDS-PAGE, Western blotting)
遠心分離器(Centrifugation)
タンパク質凝集体の回収など
菌体回収やタンパク質濃縮など
PCR装置
DNAやRNAの定量の他、タンパク質の熱安定性評価にも使用
高圧液体クロマトグラフィーシステム
タンパク質の分子量を解析可能
分光装置
温度依存性追跡ユニットも利用可
(ダイオードアレイ型)
(微量サンプル2 µL用)
蛍光偏光も測定可能
(9回反射ATR)
溶液中の金属イオン濃度をppbレベルで測定可能
動的光散乱法による粒子径分布の測定やゼータ電位の測定
プレートリーダー
タンパク質の濃度測定、反応追跡に大活躍
定波長での吸光度・蛍光・発光を測定
顕微鏡
線虫へのインジェクション
CMOSセンサーカメラ付き
培養装置
20, 30, 37℃に設定
数リットルスケールで培養可能
サンプル攪拌などにも使用
大腸菌などの増殖追跡用
細胞培養などに使用
その他
嫌気条件での反応を追跡
プレートごとの超音波処理が可能
大腸菌の破砕に大活躍
試験管ごと計測可能
溶存酸素量などを非接触で計測
バイオレイヤー干渉法を利用した分子間相互作用解析装置