今年はコロナ禍から解放され、研究室活動が完全に元通りになった一年でした。5月には第2回生命金属科学シンポジウムを矢上キャンパスにて主催し、多くの方々にご参加いただきました。また、学生と学会に参加して、研究発表の後に一緒に食事するということもできるようになりました。第2回生命金属科学シンポジウムや第35回生物無機化学夏季セミナー、メタルバイオサイエンス研究会2023では、学生がポスター賞や発表賞を授賞されるなど、今後の活躍が期待されます。
私たちの研究室では、ALSで進行するSOD1のミスフォールディング過程について研究していますが、SOD1変異を原因とする犬の類似疾患(変性性脊髄症)に関する研究も本格化させることができました。まずは、犬の変異型SOD1に関する構造解析を行い、共同研究として発表しています。
また、バクテリアから新規タンパク質をクローニングしてその構造と機能について研究するという、これまでとは少し違った研究の方向性も形にすることができました(Paenibacillus lautusから見出した新規のCu/Zn-superoxide dismutase)。この流れに沿って、いくつか別の面白そうなタンパク質についても来年には報告できればと思っています。
もちろん、ALSに関与するSOD1の研究についても進めており、12/30というギリギリになりましたが、論文のリバイスを完了させ、来年早々にはご報告できるはずです。特許申請といった初めての経験も積ませていただき、感謝です。
解説記事や総説の執筆も、ありがたいことに例年に比べて多くの依頼がありました。「化学と教育」では金属タンパク質の魅力を、「脳神経内科」では蛋白質科学的な視点から見たSOD1-ALS研究の実際的な問題点を、そして、来年に発刊される雑誌ではあまり着目されていないCCSの役割をまとめてみました。
来年は、6月に第50回生体分子科学討論会・第3回生命金属科学シンポジウムを主催します。また、本の編集も計画されています。さらに、一番嬉しいことですが、それぞれの学生が面白そうな実験結果を出してくれていますので、来年にはさらによい成果を報告できるように頑張ります。