Farewell to 2025

2025年は、7月末にロサンゼルス、10月中旬に高雄、そして、10月末にパリと、例年に比べて海外での講演が多い一年となりました。国内でも、神経学会(5月)や生化学会(11月)の年会に招待いただき、蛋白質科学会(6月)の年会ではセッションをオーガナイズしました。ご関係の皆様には感謝いたします。

私たちの研究室からの成果の論文発表は2件です(その他に、共同研究が1件)。まず、放射線耐性細菌として知られる Deinococcus radiodurans が、CuZnSOD と Lactonase が融合した新規タンパク質を発現していることを見出しました(J Biol Chem 2025 301 110499)。このタンパク質の生理機能までは明らかにできませんでしたが、以前に報告した Paenibacillus lautus 由来の CuZnSOD に続き、「特異な構造的特徴を有する CuZnSOD」としては本研究が2例目の報告となります。このような「教科書的ではない」CuZnSOD を積極的に探索し、構造・機能解析を進めることで、CuZnSOD がこれまで想定されてこなかった新たな生理的役割を担っている可能性を明らかにすることを目指しています。

また、ヒトのCuZnSODが酸化を受けて変性に至る分子機構を明らかにしました(Protein Sci 2025 34 e70339)。この研究は、MDシミュレーションやネイティブ質量分析、細胞毒性評価など、多くの共同研究のもと、過酸化水素によるCys111の酸化がCuZnSODの単量体化を引き起こし、さらにCys6の酸化によって疎水性コアが崩壊することで、CuZnSODが変性する過程を示しました。CuZnSODの変性は一部の筋萎縮性側索硬化症(ALS)にみられる変化であることからも、ALSの病態を理解する上で重要なメカニズムになると考えています。本論文を読んだ海外の学生から、私たちの研究室に参加したいとの連絡をいただくなど、嬉しい反響もありました。

さらに、2023年度に終了した新学術領域研究「生命金属科学」の成果発表の一環として、書籍「Copper in Biology」の執筆・編集を行い、Royal Society of Chemistryから出版されました。こちらも、原稿の執筆などでご協力いただいた方々に感謝いたします。

学生による学会・研究会での発表は、生命金属科学シンポジウム(5月)で3件、蛋白質科学会(6月)の年会で2件、メタルバイオサイエンス(10月)で3件となりました。特に、M2の髙橋君は生命金属科学シンポジウムで優秀発表賞、蛋白質科学会の年会ではポスター賞を受賞しました。

今年の3月末に、村木さんが石川県立大学に栄転され、教員一人体制での研究室運営に戻りましたが、村木さんからの継続的なサポートに加えて、主体的な学生の皆さんのおかげで、研究成果を着実に得ることができました。来年度から二人体制に戻る予定ですので、私たちの研究内容や手法の幅が広がることに期待してください。

今年一年の打ち上げということで、私たちの研究室に配属が決まった三年生も招待して、中華街で忘年会を楽しんできました。終電間際まで二次会も楽しみ、来年もいろんな面白い成果を産み出してくれそうな期待とともに、年を越すことができそうです。

2025年もお世話になりました。2026年もどうぞよろしくお願いします。

PAGE TOP