A paper published!(研究成果の発表)

Deinococcus radioduransというバクテリアがもつ銅・亜鉛スーパーオキシドディスムターゼ様のタンパク質について、その構造と機能に関する研究をJournal of Biological Chemistryに発表しました。D. radioduransは、もともとガンマ線滅菌した牛肉の缶詰から単離された細菌で、放射線や紫外線、乾燥に耐えることができる変わった細菌です。

放射線は活性酸素を発生させるため、D. radioduransは活性酸素を消去する能力が高いと考えられており、抗酸化作用をもつマンガンを豊富に含んでいるといった特徴があります。活性酸素の一つであるスーパーオキシドを消去するという点で、私たちが専門にしている銅・亜鉛スーパーオキシドディスムターゼ(Cu/Zn-SOD)にも何らかの特徴があるのではないかと考えました。

D. radioduransのゲノムを調べてみると、Cu/Zn-SODと思われるタンパク質は2種類あり、そのうちの一つは他の細菌でもよくあるCu/Zn-SODだと考えられましたが、もう一つのCu/Zn-SODはβ-プロペラからなるタンパク質と融合していました。私たちはこの変わったタンパク質をDrSODと名付けて、どのような構造と機能を有しているのかを調べました。

実際に、DrSODは定常期にあるD. radioduransに発現していましたが、DrSOD遺伝子をノックアウトしても、紫外線に対する感受性は変わりませんでした。また、Cu/Zn-SODとしての活性も特段に高いというわけでもなく、DrSODの生理機能は結局のところよくわかりませんでした。しかし、DrSODに特有のβ-プロペラからなるドメインには、カルシウムイオンが結合し、2-クマラノンというラクトンの加水分解を触媒する機能があることがわかりました。

2-クマラノン以外のラクトン化合物にはほとんど活性を示さず、このタンパク質は一体何のために存在するのかは今後の研究課題です。しかし、一つのタンパク質で二つの酵素活性(スーパーオキシドの不均化と2-クマラノンの加水分解)を示す面白いタンパク質であることを示すことができました。

本研究は、目加田君(2022年度修士卒)が始め、臨時職員の新谷さんや須恵さんが活性の検討を行い、阿久津さんや村木さんに構造解析を進めてもらいました。興味のある方はこちらをどうぞ。

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